1.本指針の背景と目的
指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入居申し込みをするお客様が増加している反面、入居定員等の関係上、迅速な入居が極めて困難となってきている。そこで、何らかの基準を用いて、入居の優先順位を決定し、それに基づいた入居業務を遂行することが求められている。
そこで北海道老人福祉施設協議会では、北海道の指定介護老陣福祉施設における公正で厳格な入居業務の遂行の参考に資するため、本会としてのガイドライン「指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入居優先度判定指針<第1次試案>(以下「判定指針」という。)」を示すことにした。
2.「判定指針」を用いた入居までのフロー
- お客様からの申し込み
○お客様本人、もしくは家族などから施設への直接申込み
○居宅介護支援事業者等からの申込み
※所定の「入居申込書」および「認定調査票(概況調査のみでも可)」もしくは「介護認定審査会資料」が必要
↓ - 入居申込書の受理
○「入居申込書」及び「認定調査票」もしくは「介護認定審査会資料」の受理
○受理簿への記載
↓ - 「判定指針」による優先度の決定
○「判定指針」を用いて優先度を「一次判定」
※「入居申込書」及び「認定調査票」もしくは「介護認定審査会資料」から、所定の部分について転記することで自動的に判定される
↓ - 入居判定委員会の開催と優先度の「総合判定」を決定
○「判定指針」を用いて優先度を、「一次判定」と各施設で設置される入居判定委員会でその他の勘案事項を加味して検討を行い、最終的な「総合判定を決定」
↓ - 入居申込者待機者順位リストに掲載・作成
○「総合判定」に基づいて順位リストを作成
○適当な時期(例:お客様の要介護認定の更新時期等)に前記の作業により、順位リストを更新する
↓ - 空きベッドの発生と順位リストの上位者に対する入居の働きかけ
○空きベッドが発生した場合に、順位リストに掲載されている上位者への入居の働きかけを行う
○ただし、緊急入所を要するお客様が発見された場合は、入居判定委員会を開催するなど、適切な手順により、そのお客様の入居を最優先にすることがある
↓ - 入居
3.「判定指針」の構成
判定要素1 | 要介護度による5段評価 (A~E) |
判定要素2 | 精神症状・行動障害の状況による5段階評価 (A~E) |
判定要素3 | 介護者の状況による5段階評価 (A~E) |
判定要素4 | 生活経済などの状況による5段階評価 (A~E) |
↓
4つの判定要素を総合的に判定し、「一次判定」として、5段階評価(A~E)を行う
↓
入居判定委員会において「一次判定」と、さらに検討すべき事項を勘案して、各施設としての「総合判定」を行う
4.「入居申込書」等の受理の際の留意事項
- 「入居申込書」の受理にあたって
- 「入居申込書」は、お客様本人、ご家族などから受理することを基本とするが、お客様などからの依頼を受けた居宅介護支援事業所や保険者などから受理する場合もあること
- 「入居申込書」については、各欄をすべて記入してもらう必要があることから、受理の際に充分精査すること。
- もしお客様本人やご家族などが記載することができない点が」ある場合は、担当の居宅介護支援事業所や保険者などからの情報提供の協力依頼をすることとなるが、その場合、お客様側から居宅介護支援事業所や保険者等への情報提供に関する依頼があることが前提となること。
- 「認定調査」または「介護認定審査会資料」の受理にあたって
- この資料については、判定指針の中で「精神症状・行動障害の状況」に関する情報を得るためのものであり、「認定調査票」または「介護認定審査会資料」のどちらか一方の資料で足りるものであること。
- したがって「認定調査票」の場合は基本調査の『7.行動について、あてはまる番号にひとつだけ○をつけてください』の欄のみで足り、「介護認定審査会資料」の場合は、最初の1ページのみで足りること。
- この資料の受理に関する原則的な流れとしては、①お客様が保険者に該当する資料を提供する⇒②保険者がお客様に資料提供を行う⇒③お客様が入居申込を行う介護老人福祉施設に提出する、という手順をふむものであること。ただし、この一連の過程において、必要に応じて居宅介護支援事業者や保険者等が事務的な援助を行うものであること。
- この資料および「入所申込書」の入手に関して、居宅介護支援事業所や保険者等から協力依頼が得られるよう、北海道保健福祉部介護保険課より関係機関に協力要請が別途、行われる予定である。
5.「判定指針」による判定の実際
- データの入力について
- 別添のプロッピより「入所申込書」のファイル(Microsoft Excel)を呼び出し、受理した「入居申込書」のとおり入力する。このことで「判定指針」の該当する各欄に自動的に入力される。
- 別添のプロッピより「指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入居優先度判定指針」のファイル(Microsoft Excel)を呼び出し、受理した「認定調査票」または「介護認定審査会資料」から 2精神症状・行動障害 の各欄に入力する。
- 判定要素及び一次判定について
- 前項の作業により、4つの判定要素(1.要介護度 2.精神症状・行動障害の状況 3.介護者などの状況 4.生活・経済の状況)について、下記の判定基準により自動的にA~Eのランク付けが行われる。
- 同様に「一次判定」の欄に自動的にA~Eのランク付けが行われる。
- 留意事項
- 各ファイルの該当セルには、それぞれ計算式が入力されているので、所定のセル以外は絶対に入力せず、ファイル保存のため、今回送付したフロッピをコピーして使用すること。
- 「入所申込書」のファイルと「指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入居優先度判定基準」のファイルはセットになっているので、お客様一ずつ、一つのファイルとして保存すること。
6.「判定指針」の判定要素及び判定基準
- 判定指針の判定要素1<要介護度>
要介護度5~1を、そのまま5段階に位置付けること。
A ランク=要介護5 Bランク=要介護4 Cランク=要介護3
Dランク=要介護2 Eランク=要介護1 - 判定指針の判定要素2<精神症状・行動障害の状況>
- 「認定調査票(概況調査)」等の調査項目の結果をそのまま利用することとし、「要介護度」との考え方でいえば、要介護度はいわゆる問題行動をも含み、総合的に勘案しているものであるが、精神症状・行動障害については、在宅ケアの難易度に大きく影響する事項であることから、あらためて本基準で判定基準の項目として設定すること。
- 検討項目の19項目について、それぞれ3区分(ア.ない、イ.ときどきある、ウ.ある)とし、下記の考えにより5段階に位置付けること。
Aランク:イ.ときどきある、と、ウ.ある、の合計項目数が10項目以上
Bランク:イ.ときどきある、と、ウ.ある、の合計項目数が7~9項目以上
Cランク:イ.ときどきある、と、ウ.ある、の合計項目数が4~6項目以上
Dランク:イ.ときどきある、と、ウ.ある、の合計項目数が1~3項目以上
Eランク:19項目とも、ない、というケース - 判定指針の判定要素3<介護者などの状況>
- 判定項目を、家族構成、介護者の有無、年齢、健康状態、介護可能時間、要介護者との関係の6項目とし、それぞれ良好な状態から、生活課題があると思える状態まで3段階(ア、イ、ウ)に分類する。
- それら6項目について、下記の考え方により5段階に位置付けすること。
Aランク:家族構成が<独居>で、介護者の有無が<介護者はいない>というケース
Bランク:イ.ときどきある、と、ウ.ある、の合計項目数が7~9項目以上
Cランク:イとウの合計項目数が3~4項目
Dランク:イとウの合計項目数が1~2項目
Eランク:6項目とも、ア、のケース - 判定指針の判定要素3<生活・経済等などの状況>
- 検討項目を、待機状況、在宅サービス利用率、在宅サービス利用状況、保険料段階、住居の5項目とし、しれぞれ良好な状態から、生活課題があると思われる状態まで5段階(ア、イ、ウ、エ、オ)に分類する。
- それぞれの項目ごとに、アに0点、イに1点、ウに2点、エに3点、オに4点の得点を与え、合計点を算出し、下記によりランクを設定する。
Aランク:16点~20点
Bランク:11点~15点
Cランク: 6点~10点
Dランク: 1点~5点
Eランク: 0点 - 一次判定について(判定指針により自動的に設定されるランク)
- 4つの大区分のA.B.C.D.Eにそれぞれ4.3.2.1.0点を与え合計点数を算出する。
- その合計点で、最終的に「一次判定」として下記によりランク分けを行う。
Aランク:12点以上
Bランク: 8点~11点
Cランク: 4点~7点
Dランク: 1点~3点
Eランク: 0点
7.入居判定委員会の進め方【例示】
「指定介護老人福祉施設の入所に関する指針について」により『入所に関する検討のための委員会の設置について』示され、すべての指定介護老人福祉施設に待機しているお客様の優先入所等について検討する委員会(以下「入所判定委員会」という。)を設置することとされています。 したがって、同通知に示されている要件を満たした入所判定委員会を各施設ごとで設置することが必要とされておりますが、本会として、入所判定委員会の構成委員、機能、入所判定にあたっての留意事項について例示を書きにお示ししますので、各施設の入所判定委員会の設置に際して、参考にしてください。
- 入所判定委員会の名称 「○○園」入所判定委員会(各施設独自で適当な名称を付すること)」
- 入所判定委員会の役割
- 入所申込を行って入居待機中のお客様について、入居順序の優先順位を確定すること。
- 空きベッドが生じた場合に、入居を働きかけるお客様の決定に関すること。
- 入居待機中のお客様について、お客様ご本人やご家族等との連絡調整を図り、その生活の様子や生活上の課題を把握すること。
- 入居待機中のお客様を担当している居宅介護支援事業者や保険者との連絡調整に関すること。
- その他、入居判定にかんして必要なこと。
- 入居判定委員会
- 施設職員(施設長、生活相談員の代表、介護職員の代表、看護職員の代表、介護支援専門員の代表等)
- 居宅介護支援事業所の介護支援専門員
- 保険者(市町村)の担当職員
- 第三者としての立場を有するもの(地域住民団体の代表者、苦情解決体制における第3者委員等)
- 入居判定委員会の開催
- 委員会は、最低3カ月に1回程度開催するものとし、定例化することが望ましい。
- 委員会は施設長が召集する。
- 入居待機者お客様について入居順序の優先順位を確定する手順
- お客様等から入居申込書および関係資料を受理し、受理簿に必要事項を記入する。
- 「指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入所優先度判定指針」により入所優先度について「一次判定」を決定する。
- 「一次判定」と、入居順序の優先順位を確定する為のその他の勘案事項(「7.入居順序の優先順位を確定する為の勘案事項」参照)について検討し、最終的な優先順位のためのランク付け『総合判定(A~E)』を行う。
- 『総合判定』に基づいて、入居申込者順位リストを掲載する。
- 空きベッドが発生した際に、入居申込者順位リストに従い、お客様に入居の働きかけを行う。
- 入居順序の優先順位を確定する際に留意すべき事項
- 最初に入居申込を受理した段階で順位付けを行うが、その後、要介護認定の更新等により要介護度が変更された場合、介護者等の生活・経済状況が変化した場合などには、再度、優先順位の格付けを行わなければならない。すなわち、その際には、新たな順位付けが行われることになるので、例えば、3カ月に1回、優先順位付けの更新を行うなど、定期的に位置付けることが望ましい。
- したがって、何らかの変化があった場合には施設側には連絡していただくなど、お客様や居宅Kライご支援事業所等との日常的な連絡体制を確立しておく必要がある。
- 例えば、急に介護者が死亡したなど、入居のための緊急度が切迫したケースが生じた場合は、作成された入居申込者順位リストの順位にかかわらず、早急な入居が必要となる場合があることから、各々の施設でそうした場合の理由、手順などについて作成しておく必要がある。
- 同一の『総合判定』であるお客様が複数いる場合は、その中でさらなる順位付けが必要となるが、その順位付けについては、入居申込年月日(既に経過している待機期間)、入居希望年月日などを勘案して各施設個々で判断することとなる。
- 入居の働きかけを行ったが、その時点で入居を辞退し、入居時期を繰り延べたいというお客様の場合に、そのままの順序で入居申込者順位リストに位置付けておくか(次の順位に位置付けておく)、あるいは一定の順位の後に再順位付けるか(例えば、10人後に順位を下げる)については、各施設で手順を決定しておくべきである。ただし、いずれの場合においても、そのお客様に説明を行い、同意していただきことが必要である。
- 入居待機していたお客様から、入居辞退の申し出があった場合には、入居申込者順位リストから削除する。
- 入居順序の優先順位を確定する為の勘案事項
- 基本的には、各施設でのケースに応じた検討が行われることが望ましいが、概略的には、次のような事項が考えられる。
- 介護者が急で重大な疾病等により、介護の継続が困難になった場合への配慮。
- 庭内での虐待、災害、事件、事故などにより、介護体制が著しく低下した場合。
- 空きベッドが生じた居室の男女別の状況への配慮。
- 空きベッドが生じた居室あるいは施設棟(痴呆性高齢者専用棟等)への配慮。
- 入居希望のお客様が夫婦等で、同時の同質入居を希望する場合への配慮。
- お客様の要医療状態と、施設がもつ医療機能とのマッチングへの配慮。
- その他、勘案すべき事項への配慮。